Sunday, June 18, 2006

酸の王子様、謁見

折れ矢に到着して暫く取りとめもない話をしていると、板金鎧に身をつつんだ斧を持ったゴーレムの如き男がやって来た。一緒に酸のダンジョンに潜る仲間を捜しに来たらしい。

酸のダンジョン!
酸っぱい匂いの充満した、毒々しい地だ。先代から聞いた話ではどの様な鎧も役立たない沸騰した酸の川が流れ、奥には「ピザデブ」の異名を取る悪魔の王子が居ると言う。
ここの所ヌル目の仕事しかこなしていなかった俺としては望むところではある。早速装備を整えてついて行く事にした。
既に「鍵」は取得しているという話ではあったが、王子様との謁見には随分待たされる事になった。何でも謁見は最大で2時間程度、最短でも30分程度の時間が掛かると言う。先行した別のグループは俗に言う「特化装備」であったので、かなり短い時間で謁見を終わらせていた。
先行したグループの謁見終了までこちらは適当に時間を潰していたのだが…その間に二度も気を失う事になった。煮え立つ酸の川の破壊力は抜群で、その破壊力は踏みつけたネズミが川の水に浸かったブーツの匂いで即死すると言うレベル。
…ブーツ買い換えないとなぁ。

さて、謁見と相成った訳だが…
先に「ゴーレムみたいな斧戦士」等と書いているのを見ても判る通り、折れ矢ニュービーである俺は誰がどの程度の戦力を有しているか皆目見当がついていない。おかげで随分苦労した…
結局このデブと会い見えるには、戦士でしっかりとラインを組まねばならないのだが、誰がダメージディーラーなのかが判らないとラインが組めないのだ。おかげで最初は散々転がされ、愛馬Longも灰色世界に旅立つ羽目になってしまった。途中からダメージディーラーの見当がついてラインを構築する事が出来るようになった。こうでないとな!
俺は散発的にイグノアを叩き込みながら(と言っても、2発に1発はイグノアだが)必死に仲間の傷に包帯を巻いて回ることにした。それでも間に合わず何度か仲間諸共灰色世界に足を踏み入れる事になったが…何とか王子様に撤退頂く事ができた。転がること実に10回!
色々と戦利品が手に入ったようだが、俺は分け前を放棄し、一緒に戦ったワンコへトカゲの串刺し(王子様の所有物として名の知られたもの)を与えるよう提案した。なんと言うか、素材とやらではロンソ磨きにもならんしな。

激戦を物語るかの様に、2本持ち込んだロングソードはボロボロになっていた。
折れ矢に戻って戦利品分配を横目で見ながら、新しいブーツをその辺に居る人間に発注し、ロングソードの痛み具合を確認していた…その時、マスターとカウンターに座った緑色の服着たオッサンとの会話が耳に入った。
「(前段は聞いていない)しがない鍛冶屋云々(勿論後段も聞いていない)」
ありていに言えば、その人物が鍛冶屋であると言う部分しか聞いていない。我ながら鋭い耳を持ってゐる。速攻でその人物の背後に忍び寄り、武器の修理を依頼する。
なんぞ偉い人物であると言う事だが、知った事ではない。仕事もせんと偉ぶる人間より、仕事をしっかりこなす人間が偉いのだ。己の職分を果たそうとする人間は尊い。生まれや種族、年齢その他は一切関係ない…己の持つ技術をしっかり使い込む人間だけが、良く砥がれた剣先のように輝きを発する。
だから、なんか王国の重鎮だとかそういう話は聞かなかったことにする。
そういう事を無しにして、実際武器防具の修理の腕は確かだった。その確かな技術にしっかりとした報酬を支払いたかったのだが…

なんで鍛冶屋連中は自分の仕事に自信が持てないかな?
一個100GPとか、そのしっかりした修理作業がエティン一匹から奪うことのできる金貨より安いってのが気に食わん。
どうも代価を受け取らないので、その辺で拾った「比較的透明で、硬い謎の石」をオマケで差し上げることにした。
て言うかよ。
俺のナイス切れ味の発掘ロンソは100GPでさくっと治っちまう程度の安物なのかと。
1000GPは出してもいいと思うんだが。

少なくとも俺にとって、愛用するロンソ類はそれだけの価値を持つ。剣一本あれば家の一件分ぐらい金稼いで見せるんだがなぁ。



なお、酸の川に突っ込んで嫌な匂いを放っていた俺のブーツ。
銀行のゴミ箱突っ込んだら「これこれ、これが欲しかったんだ!」とか言われてしまった。
さすがゴミ箱、尋常ではない味覚だ。

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